川の再生を図るにあたって、その水源の維持は最も基礎的な必須条件です。したがって、朝倉川の水源林である石巻山多米県立自然公園の中の国有林を「里山」として再生することを提言します。
保全の手法としては、この周辺で最も一般的な二次林である植生、コナラ、アベマキ、クリ、クヌギなどブナ科の落葉広葉樹が優先する複層林が適すると考えられます。この「里山」は水源林としての機能はもちろんのこと、人々が自然に親しむための機能も果たし、多米の里山づくりを楽しむ会、(社)豊橋青年会議所や愛知森林管理事務所などとタイアップし、下刈り作業、自然観察会等「里山づくり」に取り組んでいます。
川をコリドー(回廊)として機能させるためには、川縁の植樹により水源林から海に至るまでのネットワークを形成する必要があります。このコリドーを通じ、鳥や昆虫の移動が可能となり、街中へこれらの生物が出現する頻度も高まります。
そこで平成10年からは愛知県の「水辺の緑の回廊」事業にのっとって、朝倉川にて「朝倉川植樹大会」を行っています。
植樹する樹木は地域特性種である上記落葉広葉樹や、この地域で望ましいと考えられる河畔林を形成してきたマルバヤナギ、カワヤナギ、キヌヤナギなど、約60種類を多様に選定しています。また、このような高木を並木として終わらせるのではなく、その高木と植生を同じくする中・低木、草木を一体的に植樹し、垂直的な階層性を持たせます。
また朝倉川と豊川との合流点付近にも、樹木の植栽を図り、森をつくることが望ましいと考えられます。
鳥や昆虫はコリドー(回廊)としての川を移動します。これらの生物が市街地においてより頻度高く出現し、街全体の生物相をも豊にするために、川縁にビオトープ(生物再生のための生息地)を創生することが必要です。
平成11年9月より、源流部の多米町滝ノ谷の敷地約2,000㎡の無償提供を受けて、ビオトープづくりを始めました。 さらに平成24年9月には、現在の隣接地約700㎡の提供をしていただき、エリアの拡張をしています。 このビオトープは、滝ノ谷遊園という名称で豊橋市の公園としても認定されており、当会が管理運営を行う契約をしています。 ビオトープ創生により、川全体への多様な生物の供給源となるサンクチュアリを目指すと同時に、メンテナンス、自然観察会などを通じ、付近の小中学校とも関わり合いを持っていくなど、環境教育の場としての位置付けも組み込んだものを目標にしています。
河川は地域住民がそれにどう関わっているかも含めて、地域の環境の状態をトータルに映し出す鏡のような存在です。そのメンテナンスは、市民、企業、行政のパートナーシップにより地域ぐるみで行うことが望まれます。
現状ではゴミの散乱が朝倉川全域で見受けられ、特に橋付近では顕著です。 そこで、地域住民、企業、行政の三者が一体となった河川環境美化運動の必要性を訴えるとともに、身近な環境改善運動へのきっかけづくりのため、企業や各種団体などと実行委員会を組織し、平成9年から毎年、「朝倉川530大会」を行っています。 また同時に家庭排水、農業排水、企業排水の水質改善運動を地域ぐるみで展開することを提言します。
ホタル再生目標区間としては、上蝉川橋から寺門橋までの約2kmを想定していますが、ホタルが安定的に自然発生するまでの間は、ホタルの飼育・放流を行い、ホタル生息の環境や必要条件を整えることを試行し、促進する必要があります。この飼育にあたっては、餌のカワニナを含めて地域固有性を把握し、尊重することが重要です。
ホタルの飼育は当分の間は生息の危険分散を図ることが目標となりますが、それだけでなく、放流後の河川環境のモニタリングを行ったり、他の生物への関心も同時に高めることにつながります。こうしたことを地域ぐるみでおこなうことにより、多くの人々がネットワークを形成し、豊かな人里の再生へと発展していくことが期待されます。
ホタル保全、再生のための多自然型護岸形態を提言します。一つの考え方としては、護岸の片方を垂直なものとし、もう一方を非常に緩やかなスロープとします。護岸の垂直にした側は、植木鉢状に土を詰めることのできる護岸とし、水面への輻射熱を抑えると同時に、川縁の樹木と水面との距離を近くに保ちます。
水流は自然の姿に近づけるべく蛇行させ、汀(みぎわ)沿いは木で土留めをし、水流の緩やかな側の汀にはセリやミゾソバなどを、水流の激しい瀬側の汀にはヨシなどを植栽し、その根により崩壊を防ぎます。 現在ある落差工は魚類の移動の障害になっているケースが多く、これに代わり、自然石による小落差工を複数設置する方法に改善する必要があります。 また、夜間照明はホタルの配偶行動を阻害するだけでなく、その他の生物のバイオリズムを狂わせることもあるので、夜間照明を遮光するための植樹を行う、水銀灯からナトリウムランプへ変更する、フットランプへ変更するなどの対策を行う必要があります。
朝倉川再生に向けての象徴的プロジェクトとして、朝倉川・内山川合流地点に隣接する多米公園の親水化を提言します。
朝倉川本線より多米公園内に水路を引き込み、新しい小川と池を創生します。これは増水時に水生生物が一時的に回避する経路(レフジュア)として機能します。また、水量不足を補うため、井戸を掘り渇水時における対応を図ります。小川(流水)では、増水時に水生生物が一時的に回避することにより、朝倉川でのホタルをはじめとする生物生息の安定性を高め、また、池(止水)にはギンヤンマなどの止水性の生物が再生するものと期待されます。
葦毛湿原周囲はこの地域の特性を示す二次林である落葉樹林で、湧き水からなる多くの細流が流れており、地域特性を現存させた貴重な源流域となっています。この貴重な湿原植物が群生する葦毛湿原の保護は非常に重要です。
また、この周辺には多くのため池が残っており、これが長期的には水生生物に好影響を与えてきました。これらのため池の周囲には、メダケを植栽するなどし、保全を図っていくことを提言します。
河川だけでなく、流域全体でより健全な水循環を目指すために、市街地全域において透水性の舗装や地盤を拡大して、自然面率を向上させることを提言します。
特に川に近接する小学校や公園などの公共施設には雨水を地下に溜め、浸透させる浸透枡を設置するなど、循環型まちづくりを推進します。
ビオトープづくりをはじめて平成11年よりスタートした滝ノ谷池ビオトープも20年以上経過し、ホタルの自生も見られるようになりました。 その一方で、経年的な変化により流路が広がり流速の低下及び体積物などによる低質の変化が見られるようになってきたため、流路の保全と低質の改善を食物連鎖などを取り入れながら行なっています。 植物種については、特定外来生物でもあるキショウブや笹の根の除去を行っているものの度重なる再繁茂など継続的な活動の必要性を感じています。 ホタル育成ゾーン止水域の環境が大幅に改善しにより、メダカの繁殖やアズマヒキガエルの産卵など良い成果が出てきているものの、商業目的と思われる大量の採取の形跡も見られ課題も多いという現状もあります。
また、会員を中心とした自然環境に関心のある皆様方に、ビオトープの目的の理解と様々な形の利用を促進していく為にも「ビオトープメンテナンスガイドライン」や「ビオトープで遊ぼう(利用ガイド)」などの作成を含め、「自然と楽しめる楽しい場所・・・」としての企画や仕掛けも積極的に行っていく予定です。
市内小中学校、登録ボランティアなどの参加を得て、継続して行う。 桜丘中学校、東田小学校 プレイパーク
渇水の状態からの生態系の改善を目指しながら、引き続き豊橋市と連携し経過を見守りながら環境の回復に努めていきます。
24年2月に豊橋才能教育幼稚園の園児とともに幼虫の放流を行って以降、以前ほどではないが回復の兆しが見られます。最下流部の葦の除去や止水域のササの除去など、魚類を中心とした水生生物の定着に向けた活動を定期的に行っていきます。
平成29年度に、井原第二公園の管理者でもある豊橋市(河川課)とも、今後の新たなる方向性として、「地域の子どもたちの親水の場」というコンセプトを提案しつつ、「ホタルの育成ありき・・・」という、偏ったイメージを取り払っていくためにも、行政や地域の方々と一緒に改善作業の要望などを管理者である豊橋市との協議を進めていきたいと思います。
この事業は、愛知県でも勧めている「生態系ネットワーク」の拠点として、経過を見ながら放流事業も含め地域の子どもたちとの連携を継続していきたいと思います。
”まちなかビオトープ”として住宅エリアに位置することもあり、地域との連携や理解も重要な課題である。公園の目的や意義を地域の皆様に理解をいただくために「井原ホタル学習公園」の愛称を豊橋市に提言中
朝倉川の水源地域である東部丘陵地域の国有林の中心とした里山エリアの整備と活用 ・ 里山エリアの自然を色々な方々に親しんでいただくためにも、周遊性を高め訪れやすい環境にすることも大切です。多米ビオトープも含んだエリアの案内表示等の数基設置を検討。
エリア内の沢に掛っている橋の老朽化に伴い順次架け替えの予定。
外部事例視察候補地は、現在検討中(一般参加あり)
第24回朝倉川530大会は新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止)
今年度は、20年以上継続する当団体にとっては最大規模の事業になります「朝倉川530大会」も新型コロナウィルス感染拡大防止の観点からやむを得ず中止とさせていただきました。
海洋中のマイクロプラスチック流出やプラスティック片の海洋生物への影響などが社会的に注目される中、「海の入口である河川」の清掃活動は社会的にも大変意義のあるものと考えています。
このような事業を継続的に行っていくことの意義や、「ごみのポイ捨て」や「ごみを拾う」ことの意味について様々な役割を考えながら、来名年度の再開に向けて準備していきたいと思っています。
なお、例年行っています併催イベントでもあります「朝倉川へのメッセージ」については、今まで、多くのご参加を頂いていました小学生を中心にも参加していただけるよう、日程などの変更も含めて、今年度中の実施に向けて準備していますのでよろしくお願いいたします。
28回までの実施結果をご覧ください。
また、28回の事業を通じて多くの55,000人以上の方々にご参加をいただいたとともに、323tに上るゴミを拾ってきました。
平成25年度には、地域の自治会や各校区とをはじめ河川管理者である愛知県など協議を重ねていた「水辺の緑の回廊」の今後の在り方についての方向性の一つとして、強度の間伐作業を実施しました。これは「人間の生活環境である以上、生態系の環境も大切だが、地域の安全・安心という意味での社会環境を優先させていただいた。」という判断のもとに行っています。
だからと言って、この姿が最終形ということではなく、社会環境と自然環境がうまく両立するような形を目指して、朝倉川を取り巻く人たちといい形を作っていくことが大切になります。
「朝倉川530大会」同様、メンテナンス大会も今後の役割を変化させながら、今年度も引き続きメンテナンスそのものの意義を充分に理解して頂き安全に作業が進行できるようにしていきたいと思います。
河川環境調査を実施する。(6箇所の定点にて年間4回:各季)
河川環境に関する総合的な環境モニタリング体制の確立を目指す。
*愛知県水循環再生指標策定にも参加
「朝倉川流育ビジョン2015」の中でも今までのデータの説明や指標生物の状況を写真付きで紹介しています。
8月2日(予定)「朝倉川探検隊」と称してに水質モニタリングや水生生物の捕りかたの教室を実施していきながら「絶滅危惧種川ガキの再生」に関する活動も行っていきます。
飼育ボランティアや小中学校と連携をとり、ホタルの飼育放流活動を実施すなか、今年度は桜丘学園高等部の生物部とも飼育の連携をしていきます。
賀茂小学校、嵩山小学校など(昨年実施校)
朝倉川流域への運動の浸透を図り、会員を拡大する。
インターネットホームページのスマートフォンへの対応を今年度中に完了していく予定です。
また、FaceBookやAmeブロなどSNSの機能を機能的に活用し、情報発信がよりタイムリーかつ広がりが持てるよう工夫していきます。
今年は、さらにツイッターやインスタグラムなども利用しながらより多くの情報発信をしていきたいと思います。
今年度より、年間2回発行してきた「朝倉川通信」をWEBに統一し発行方法の切り替えを行います。
また、法人会員の方々を中心にリレーコラム「ホタルの環」の連載を開始。
ホームページ上に「朝倉川通信」のバックナンバー(PDF版)の配信開始
行政・NPOを中心とした外部視察の受け入れ
シンポジウム、講演会等に積極的に参加し、情報発信に努める。
豊橋市市民講座トラム(22年度実績)
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愛知県豊橋市花田町石塚42-1
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